日本新経絡医学会は難治性疼痛、難治性疾患、学習障害の治療の学術的研究機関です。

医学会からのお知らせ

新経絡医学について

医療に於ける世界の潮流は、慢性疾患等に対する西洋医学の限界を補う代替医療が注目され、西洋医学との統合医療へ向かっています。代替医療の鍼、漢方、アーユルヴエーダ等は、欧米ではプライマリケアとして国民医療に貢献しています。この項では、新経絡医学の特徴と難治性疾患の治療について述べます。

鍼治療再評価の歴史

1965年~
痛みのゲートコントロール理論(1965)、鍼によるβエンドルフィンなど体内麻薬の分泌効果(1975)等の発見や、1972年ニクソン訪中を契機に、「鍼麻酔」が紹介され、欧米で鍼の研究が盛んになり、生理学的根拠が示されたことから、広く臨床の場で使用される。
1980年~
糖尿病・癌等の生活習慣病への西洋医学の限界を感じた米国民の間に、代替医療のカイロ、鍼、漢方、ヒーリング等が広範に浸透。
1992年
米国立衛生研究所に、代替医療調査室を設置。
1996年
クリントン時代、代替医療法が成立、患者は代替医療にアクセス可能になる。
1997年
米国立衛生研究所の「鍼治療に関する臨床研究シンポジウム」:鍼が術後の吐気、悪阻、歯科術後痛、生理痛、テニス肘、線維性筋痛、筋々膜性疼痛などに有効で、連邦政府や州へ鍼治療の公的保険・適用を推奨。
2000年
ドイツ連邦委員会(医師および健康保険会社)は膝・股関節の変形性関節症、腰痛、頸部痛、頭痛に関する鍼治療のランダム化比較試験等を提唱し、大規模調査開始。
2003年
全米医学校の6割に代替医療の講座開設。
2005・2006年
東大、阪大病院外来で鍼治療開始。
2006年
ドイツ連邦委員会は、大規模ランダム化比較試験の結果、膝・股関節の変形性関節症、慢性腰痛、頸部痛、頭痛の治療に鍼を用いることを提案。
2006年
産業医・産業保健師・理学療法士・鍼灸士等への新経絡治療セミナーを開始。
2011年
日本新経絡医学会が創設される。

このように、1997年の米国立衛生研究所の「鍼治療に関する臨床研究シンポジウム」および2006年のドイツ連邦委員会における大規模ランダム化比較試験の結果、膝・股関節の変形性関節症、慢性腰痛、頸部痛、頭痛の治療に鍼を用いることを提案したことにより、世界的に鍼治療の有効性が確立されてきた。

疾病の捉え方と治療方法の構造

次に、我々の疾病の捉え方と、治療方法の構造について述べます。図1の疾病の車輪モデルのように、疾病は、遺伝因子(体質、気質、自然治癒力)、習慣因子、環境因子の複合的因子により発生します。現代の難治性疼痛疾患や難病を治すためには、単一の治療法ではなく、遺伝因子、自然治癒力に主要に係る新経絡治療・漢方、習慣因子に係る糖質制限ダイエット、環境因子に係る福祉工学を対応させて、統合的な医療を行い、多くの成果を上げています。


図1. 疾病の車輪モデル


図2. 新経絡医学の構造

一例をあげると、腰痛の患者が受診した場合には、①病態の診断、②食事環境の診断、③作業環境の診断を行います。病態の診断では、西洋医学的な診断(MRIなど)、経絡医学的な診断―経絡の詰まり部位、症状の伝播範囲、病期の診断―を行い、操作経絡と対応穴を決定します。次に、肥満や脊柱管狭窄等がある場合には、炭水化物を制限する糖質制限ダイエットにより減量や黄靭帯の骨化予防を行います。最後に、作業環境の診断により、重量物や中腰姿勢などの不良姿勢について改善を指導し、サポーターを処方し、悪化・再発予防の対策を行います。職業病外来では、腰痛、頸肩腕障害、膝関節症などの作業関連性の筋骨格系障害、CRPS、PHN、振動病、塵肺、有機溶剤中毒、職業癌(アスベスト癌)、うつ病、脳卒中後遺症、発達障害など多彩な疾病を対象に経絡治療を行っています。新経絡治療は、殆どの難病に対応できる優れた治療です。

新経絡治療の特徴

新経絡治療は、経絡というツボのネットワークを刺激し、全身のエネルギーの流れを調整し、疼痛、免疫異常、自律神経障害などの治療を行います。低コスト・低副作用で、鎮痛効果が高い優れた治療法です。新経絡治療は、押し棒で経絡を刺激するため、感染のリスクがなく、設備が不要で容易に使用できます。新経絡治療の特徴は、1)エネルギー医学の一つであり、経絡のエネルギーの詰まりにより疾病が発生し、経絡の詰まりを治すことにより改善します。2)手足の対応穴を使用して治療します。3)陰陽の経絡を繋ぐ絡穴を使用して治療することを特徴としています。
治療効果の特徴として、補強治療に強く、神経や血管の補強・再生を通して、①CRPS・PHN、脊柱管狭窄症などの難治性の疼痛に著効、②学習障害・発達障害、うつ病、自律神経失調、パニック障害、痴呆など中枢性疾患に著効、③耳鳴り・難聴、アトピー性皮膚炎、喘息、リュウマチの改善、癌性疼痛の緩和などの多く慢性の難病に効果がある優れた治療法です。今後、統合医療の内容を豊富化することができる治療法です。

新経絡治療の適応疾患

①難治性疼痛疾患 帯状疱疹後神経痛・CRPS(外傷による複合性局所疼痛症候)・腰痛症・脊柱管狭窄症・頚肩腕障害・胸郭出口症候群・手根管症候群・偏頭痛など
②難治性中枢疾患 学習障害・発達障害、うつ病・パニック障害・自律神経失調症・ダウン症・脳性麻痺など
③難治性局所疾患 耳鳴り・難聴・アトピー性皮膚炎・ぜんそく・花粉症・リュウマチ・糖尿病・顔面神経麻痺・顎関節症など

新経絡医学の考え方と難治性疾患への応用について述べました。新経絡医学は、難治性の疼痛や難病の治療に優れた方法であり、従来の医学では困難な多くの難治性疾患の治療へも大きく貢献できる医学と考えられます。今後、さらに新経絡医学会で難治性疾患への応用と効果の実証を行っていきたいと思います。

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